携帯電話とバイクの共通点

「ケータイとバイク? そりゃ違うよね」というのは製品そのものの話。間違える奴はいませんよね、ハイ。

なぜこういうタイトルにしたかというと、それは後述します(と引っ張ってみる)。長文になりましたが、よろしければおつきあいください。

前のエントリーで、バイクの馬力規制が撤廃されるという話を書きました。バイク乗りにとっては、きっといい話なんだろうと思います。そうなんですが、個人的にはどうも気になる。 何が気になるか、よくわからなかったので、少し考えてみました。

普通に考えると、やはりこれはユーザーにとっては、いい話に思える訳です。例えば、国内仕様は海外仕様よりも馬力を抑えている機種がある。CB1300SBもまさにその一つ。馬力規制がなくなると、そういう違いはなくなるのかなあと思えてくる。
(※ちなみに、「馬力はないよりもあった方が本当にいいのか」などというのは、すごく本質的なテーマだとは思うのですが、 それはとりあえず置いておきます。自分でもよくわからんので)。

ユーザーにとっていいことなのであれば、 国内市場のてこ入れにもなるのかなあ、とも思いました。もし仮にバイクの魅力(あるいは商品力)が馬力規制によって削がれているのであれば、規制が撤廃されることで、魅力を“回復”できるということになる。そこで、バイク乗りが増えて、メーカーも売り上げ増へ……なんて単純な話にはならないでしょうが、ユーザー本意で考えると、そんなシナリオもあるような気がしてくる。となると、そんな効果を期待して、メーカーは馬力規制の撤廃を働きかけたのかもしれません。

では、馬力規制が緩和することで、国内市場の需要拡大(ユーザーの裾野拡大)とか、それに伴い魅力的な車種が増えたりすることが、本当に実現するのだろうか。気になったのはこの点です。

そもそもですが、馬力規制が緩和になると、バイクの魅力は高まるもんなんですかね。 まあ、超高速で(法律違反だとしても)高速道をぶっ飛ばしたい人にはそうなんだろうとは思います。ただ、(たしか)今までも時速180kmまでは出せた訳で、これ以上速く走りたい人って、どのくらいいるんだろうか(くどいようですが、もちろん、それは法律違反です)。個人的には、普通に乗る分には、あまり関係ない話だと思います。(速度規制と馬力規制は、また別の話かもしれませんが……)

馬力規制の緩和というのは、ユーザーのことを思って実現したものではなく、実はメーカーの手間を軽減しようとして実現したものではないのだろうか。国内用と海外向けで、こまごまと仕様を変えるのと、何も変えない(あるいは、変更の度合いが少ない)のでは、どちらが効率的かといえば、当然ながら後者に決まっている。それは今までもそうだったとは思いますが、だんだん「国内用だけ特別扱い」がしんどくなってきたのではないんですかねえ。メーカーの事情とか、細かい生産プロセスの話などはまったく知らないまま勝手に書いているので、この馬力規制の緩和に関しては、完全に見当違いの話かもしれません。ただ、環境の変化は間違いなく、日本市場を特別扱いできなくなる方向に向かっているような気がしてなりません。

それは何かというと、バイクに乗る日本人が減っているということ。 大型車に関しては、いい年こいたおっさんが乗ったりはしていますが、国内市場の縮小をくいとめるほどのインパクトはないんでしょうね。しかも、今後は少子高齢化なんてことも考えると、ますます国内市場は縮小していく可能性が高そうです。

となると、日本車メーカーにとっては「日本市場にどこまで肩入れするか」が今後、問われてくるのだと思います。バイクメーカーは国内外での激しい競争を経て、4社が世界市場で生き残り、強固な地位を築いた。なんでも昨年は、世界の二輪車生産の中に占める日本のバイ
クメーカー4社のシェアが5割を切ったのだそうですが、それでも逆に5割弱はある。これはすごいことです。世界規模で今後もがんばっていただきたいのですが、で、国内
市場はどうなるんでしょうか。

企業は企業で生き残りを図るのが当然なので、市場が縮んでいくのであれば、資本の論理としては「縮小・撤退」も視野に入れる必要すら出てくる。そこまでいかなくても、「特別扱い」を減らしたくはなるでしょう。それを安易に責めることはできませんわね。一昔前の言葉で「ジャパン・バッシング」(日本たたき)というのが
あり、それをもじって「ジャパン・パッシング」(日本軽視?)なんて言葉も言われたことがあります。このままだと、日本のバイクメーカーのモードは「ジャパ
ン・パッシング」がどんどん進むのではないか。 考えすぎかもしれないけど、そんなことも考えました。

……ここまで書いて、ようやくタイトルに戻ります(途中で読むのやめた人もいるんだろうなあ)。
タイトルの「携帯電話との共通点」というのは、日本市場の特殊性のことです。最近では、アップルのiPhoneが日本で発売されるのかどうか、なんて話も
出てきましたが、日本の場合、ドコモやauなど通信事業者の影響力が強いんだそうで、米国などとはだいぶ違うらしいです。そういう意味で、バイクと同じ
く、世界の中で日本市場が特殊な存在になっているようです。

ただ、携帯電話とバイクが違うのは、メーカーが国際競争力を持っていること。だからこそ、日本を軽視することも不可能ではないはずなんですよね。

念のために書きますが、俺は「日本メーカーのジャパン・パッシング」を期待しているわけではありません。当然、その逆です。規制がどうであれ、もっと魅力的なバイクをあれこれつくって、国内市場を盛り上げて欲しい。大変だとは思いますが、その気概とか志は、日本のメーカー(あるいは日本の行政)にはどれくらいあるのだろうか。

ちょっと気になるのは、 250ccクラスのバイクが今後どうなるのかということ。大型のバイクだけでなく、セロー250にも乗る自分としては、仮にこのクラスのバイクが減っていくのだとすると、かなり残念です。